ヒューリスティックレビュー

ヒューリスティックレビュー(Heuristic Review / Heuristic Evaluation) とは、ユーザビリティ(使いやすさ)やUX(ユーザー体験)の観点から、既存のウェブサイトやアプリケーション、システムなどのユーザインタフェース(UI)を専門家が評価する手法の一つです。 一般的に「ヒューリスティックス」と呼ばれる複数の評価基準(ガイドライン)を用いて問題点を洗い出し、使いやすさや理解しやすさを向上させるための改善提案を行います。


ヒューリスティックレビューの特徴

  1. 専門家による評価

    • ユーザーテストのように実際のユーザーが操作を行うわけではなく、UXの知識や経験を持つ専門家(UXデザイナー、UIデザイナー、リサーチャーなど)が画面や機能をチェックします。

  2. 評価基準(ヒューリスティックス)に基づく検証

    • 代表的な例として、ヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen)が提唱した「ニールセンの10のヒューリスティック」がよく用いられます。

    • 「ユーザーが今どこにいるかを把握しやすいか」「エラーが発生した時に十分な情報を提示しているか」など、一定の指標に照らし合わせてUIを評価します。

  3. 短期間・低コストで実施可能

    • ユーザーテストや大規模リサーチに比べると、手間やコストがかかりにくく、比較的短い期間で多くのインタフェース上の問題点を発見しやすいメリットがあります。

  4. 主要な問題点の早期発見

    • 多くの場合、深刻なUI・UX上の問題はヒューリスティックレビューによって早期に洗い出せるため、リリース前の段階でコストを抑えつつ品質を向上させるのに役立ちます。

  5. 改善提案とのセットでの活用

    • 問題点の指摘だけではなく、改善策の提案まで含めて実施することで、チーム内での合意形成や設計の方向性を明確にできるのが理想的です。


ニールセンの10のヒューリスティックス(例)

  1. システム状態の可視化

    • ユーザーはシステムの状態(処理中、エラー発生中など)を常に把握できるべき。

  2. ユーザの言葉を用いた対話

    • 専門用語ではなく、ユーザーが理解しやすい自然な言葉を使う。

  3. ユーザーの操作性の自由度と制御

    • ユーザーが操作を間違えた場合でも簡単にやり直しや取り消しができるようにする。

  4. 一貫性と標準性

    • 同一プラットフォームや他の類似サービスでおなじみの表現・操作を踏襲する。

  5. エラー予防

    • 間違った入力をできるだけ防ぐ仕組みを用意し、そもそもエラーが起こりにくい設計にする。

  6. 想起よりも視認に頼る設計

    • ユーザーの記憶に依存させるのではなく、画面上に必要な情報や手がかりを提示する。

  7. 効率性の高い操作性の実現

    • ショートカットや再入力の手間を減らす設計で、上級ユーザーの効率性も考慮する。

  8. 美的・最小限なデザイン

    • 不要な情報を排除し、必要な要素を分かりやすく配置することで、ユーザーを混乱させない。

  9. エラーからの回復とサポート

    • エラーが起きた場合でも原因と対処法が分かりやすいメッセージを提供し、迅速に解決できるようにする。

  10. ヘルプとドキュメンテーション

  • 使い方やトラブルシューティングなど、必要なときにすぐ参照できるヘルプを用意する。


ヒューリスティックレビューを行う手順(例)

  1. 評価基準の選定

    • ニールセンの10のヒューリスティックや、プロジェクト独自のガイドラインを準備する。

  2. タスクシナリオの設定

    • 代表的なユーザーシナリオを設定し、画面遷移や操作フローに従ってレビューする。

  3. 専門家による評価

    • 各ヒューリスティックに基づいて、UIの問題点や改善余地を記録する。

    • 問題の深刻度や優先度を判定し、後の改善計画に反映させる。

  4. レポート作成・フィードバック共有

    • まとめた問題点と改善案をチーム内で共有し、共通認識を持つ。

    • 必要に応じてプロトタイプを修正し、再度レビューを実施することも。


まとめ

ヒューリスティックレビューは、専門家が定義されたユーザビリティ原則(ヒューリスティックス)に照らし合わせてUIやUXを評価する手法です。ユーザー目線に立った使いやすさ・分かりやすさを検証できるうえ、

  • 短期間かつ低コスト

  • 重大な問題の早期発見

  • 改善策の提案・実施につなげられる

といった利点があります。一方で、実際のユーザーが行うユーザビリティテストとは異なるため、専門家の知識や経験に依存しやすい面も存在します。ユーザーテストとあわせて活用することで、より幅広い観点からUI/UXの品質向上を図ることが可能です。